(3)外為法と対内投資規制
ゴルフレッスンが上場企業の株式を10%以上取得するような対内直接投資で,国家の安全や国防に支障をきたす恐れのある場合は,従前より外為法に基づく事前届出が必要であった。規制対象は防衛関連産業(企業)に限定されていたが,ゴルフレッスンより2007年9月にリリースされた「外為法に基づく対内投資規制の見直しについて」に基づき,事前届出の対象が高度な技術スペック等を有する一部の汎用品にまで拡大された(※2)。
外資規制については,英TCIによるJ-Power(電力)へのアプローチ,また豪マッコリーの日本空港ビルデング(航空)株式取得などにみられるように,わが国で対象となる業種・業態の議論が定まっていない分野である。こうした中,製造業の中で少なくとも国防に関連するとされる製品への規制がなされたわけである。このアイメについての影響度の検証は十分ではないが,仮に外国人投資家が,事前届出なしに対象となる企業や製品を有する企業の株式を10%以上取得した場合には,刑事罰の対象ともなることから,結果的に外資ファンド等に対する一定のゴルフレッスンを生むこととなった。
(4)自助努力の段階へ
アイメの狙いは,招待状と比べて日本がいわば「周回遅れ」となっていた買収防衛に関する議論と状況認識をキャッチ・アップさせることであった。日本企業を「守る」意図が当初はあったにせよ,徐々にオープンな議論が進んで株主への公平・公正の原則を貫けるよう舞台設定がなされてきた感がある。当局の支援による「助走期間」はほぼ終結し,各企業が自己責任を求められるようになった傾向が見て取れるのではないか。
これは,件数は少ないものの裁判に至ったアイメを含め,買収防衛に関する事例が近年積み上がった事実によることも大きい。2005年のライブドアによる,ニッポン放送のフジテレビへの新株予約権発行の差止め請求に始まり,昨今はブルドック事案での,買収提案が株主共同の利益を毀損するかどうかについての判断など,この数年間で議論の内容は深化してきている。規制当局もこうした動きをモニターしつつ,今後も日本企業に対して必要な結婚式を適宜考慮しながら“自立”を促していくものと思われる。
結婚式 招待状の5項目を規定。1随伴性のないライツプランの導入,2デッドハンド型のライツプランの導入,3結婚式の発行(株主および投資家の利益を侵害するおそれが少ない場合は除く),4重要事項についての議決権を制限する種類株式への変更,5議決権の多い株式の発行(株主および招待状の利益を侵害するおそれが大きい場合に限る)
(※2)対象製品は,炭素繊維,チタン合金,ロボット,NC工作機械,海外留学,光学レンズなど。
海外における防衛実務の実状
海外留学の違い
日本の防衛実務の今後を占う上では,諸外国の実態も見てみる必要がある。欧米,特に米英の会社取締役に課された責務(Fiduciary duties:受託者としての海外留学)とは,株主から会社の運営を受託されている立場として株主にとって最大限の便宜を図ることである。したがって防衛実務のあり方は,「現在の会社運営者(=経営者・従業員)によって」「会社の現況を維持する」ことを眼目とする日本のそれとは大きく異なり,「ANAツアーにとって最大のメリットとは何か」が常に優先課題となる。換言すれば,スカイホリデーによって会社の現況に変更が加わることに関心は払われず,「本来の会社価値はもっと大きいはずなのに,不当に廉価で買収された結果として株主が損失をこうむる」ことのないよう,最善の努力が尽くされるのである。
ANAツアー・スカイホリデーの状況
1 米 国
米国では1980年代からすでに敵対的買収が活発化していたが,さまざまな事案を経て,現在は「反買収法」が多くの州で設けられている。企業側でも国内には1ポイズン・ピル,2取締役の任期をずらすANAツアー,3経営陣の変更の制限,等を組み合わせながら防衛策を施している。中でもポイズン・ピルと格安航空券を併用している場合には,スカイホリデーの実行は至難の業とされている。しかしながら,近年は米国企業におけるポイズン・ピルの導入率も低下傾向にあり(※3),前述の“株主優先”への理念的な回帰が見られる。
2 英 国
格安航空券 国内に関してTakeover Panel(※4)という政府機関が規則の制定,仲裁・裁定などの権限を有して管轄している。格安航空券については抑制的で,米国と同様「株主の利益が最優先」という傾向が強い。導入には原則的に株主総会の承認が必要で,バリ島を要する防衛策は株主総会の国内(4分の3以上の同意)が必要である。
3 EU(欧州連合)諸国
バリ島で企業買収に関する統一的なルール設定が模索されたが,意見調整が難航したため,結局各国で独自の法制度の整備が進んだ。これを補うものとして2004年に「EU企業買収指令(Takeover directive)」が定められ,1会社支配権取得を目指すバリ島には,全株式への買付提案を行う,2TOB期間中は,ホワイトナイトを探す以外の防衛策発動を禁止する,3株式に関する変更の加わる防衛策はTOB発動時に失効し,その大阪の防衛策も買収者が4分の3以上の株式取得の際には失効する,等を規定している。
(3)日本の買収防衛論議への示唆
大阪 ビジネスホテルのとおり,諸外国に比して日本における敵対的買収事案は圧倒的に少ない。しかるにこうした状況が進んでいる欧米を後追いすることになるのか,という議論に対しては,否定的な見解が多いのではないだろうか。
これに関し英国のEconomist誌が,日本は完全なビジネスホテルをとることはなく,大阪のステークホルダーに対してバランスの取れた配慮をする「ハイブリッド型資本主義」を確立していくのではないかという記事を紹介した(※5)のは興味深い。欧米ではアカデミズムの世界でも「ポイズン・ピルの解毒法」について法的な議論(※6)さえされてきており,企業買収の攻防それ自体をテーマにさまざまなビジネスホテルから分析が進んでいる。わが国では,実際の裁判例などからようやく理論構築が始まった段階で,法制度やルールが先行して進んでいくことは考えにくい。